犬の肘関節形成不全症(Elbow dysplasia,ED)
犬の肘関節形成不全とは
肘関節形成不全は大型犬種あるいは超大型犬種での前肢跛行の原因となる遺伝性整形外科疾患です。急速に成長する時期の子犬で跛行を起すことがあります。また、発症が最も起こりやすいのは5〜9ヵ月齢前後です。そのため、その時期の前肢の跛行には要注意です。EDは結果として二次性の肘関節の関節炎に進行し、成犬時に重度の跛行の原因となります。
各犬種での発症率ですが、Rottweiler (46%), Bernase Mountain Dog (40%), St.
Bernard (30%), G.Shepherd (19%), Golden Retriver (19%), Labrador Letriver
(15%)で発症していたという報告があります。
また、跛行を示す例は氷山の一角であり、
症状の出ていない90頭のBernase
Mountain Dogを調査したところ、
正常 49%
軽度の関節炎 26%
中程度の関節炎 16%
重度の関節炎 9%
という報告もあります。
50%以上の症例では両側性(すなわち、右側と左側の両方の肘関節)に罹患します。両側性の場合には明白な跛行ではなく前肢の歩様がぎこちなくなることもあります。
下の写真は正常な肘関節と重度の関節炎のレントゲン写真です(左:側面像、右:前後像)。
【正常な肘関節】


【肘関節の重度の関節炎】


肘関節の関節炎になると、関節液の増量、前肢跛行、可動域減少(完全に肘が伸ばしたり曲げたり出来なくなる)などの症状が現れます。
病因
肘関節の骨軟骨症は、高い遺伝的素因を持つ多因子性の疾患と考えられています。
○ 尺骨の内側鈎状突起の分断
Fragmented medial coronoid process(FCP)
○ 肘突起不癒合 Ununited anconeal process(UAP)
○ 上腕骨遠位内側顆の離断性骨軟骨炎Osteochondritis disscecans(OCD)
○ 関節軟骨の異常
○ 関節の不適合
によって引き起こされた肘関節の関節症は遺伝性の肘関節形成不全が発現していると考えられています。
診断
整形外科身体検査
レントゲン検査
CT検査
5ヵ月齢以上の犬の肘関節最大屈曲位ラテ像
最も大きい骨棘が 正常 なし
軽度の関節炎 2mm
中程度の関節炎 2-5mm
重度の関節炎
5mm以上
<対側の肘関節も撮影する事>
前後像は二次性変性性関節疾患の評価に有用
様々な程度の亜脱臼
治療
内科療法:体重減少、運動制限、鎮痛/消炎剤、理学療法)
外科療法:遊離体の除去、近位尺骨骨切り術 など